日本二分脊椎・水頭症研究振興財団

 

財団ニュースB&C 6-5(12月9日発行号)より
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 偶数月9日発行予定

 

 



我が家における安奈ちゃん
〜安奈、あなたと生きてきて〜


山本英子


 安奈ちゃん、あなたの底抜けに明るい笑顔、おおらかな寝顔、それは我が家の宝物です。
 家族みんなは、あなたがこんなに大きな存在になるとは思っていなかったことでしょう。また、あなたのそんな表情は家族が想像もしていませんでした。

 私は、出産前の定期検診で安奈の身体に異常があることを担当の先生から告げられ「この病院では処置できない、大学病院に行くように」と言われました。また、「大学病院でもおそらく結果は同じでしょう」とも言われました。
 それは「死」です。
 なぜこうなったのか、どうしたらいいのか、こんなことがあるのか、と夫と共に悲しみました。それでも安奈は私達を勇気づけたかったのか、あとわずかな命を精一杯生きようとしたかったのか、私のお腹を蹴り、その鼓動に我が子の運命の悲しさ、はかなさを感じ、夫と共に涙ぐみました。
 結局、大学病院での診察も結果は同じでした。
 「頭部に大きな水疱があり、分娩と同時におそらく赤ちゃんはもたないでしょう、もし生きて生まれたとしても時間の問題です」と。
 ところが、誰も予期せぬ生命力で安奈は生き抜いたのでした。頭の後ろに自分の頭より大きな水疱を抱えて安奈は保育器で眠っていました。「よく頑張ったね」と愛おしくもあり、「これからどうなるのか」という不安で一杯でした。
 これからが安奈の長い闘病生活の始まりです。頭部の大きな水疱を摘出する手術、頭部に骨がないために人工骨をはめ込む手術等々、幾度の手術を受けたことでしょう。そして病院を退院しても食事、排泄はおろか自分で呼吸さえもできない状態でした。息がとまるたびに顔が紫色になり、体は海老が反ったようになって(チアノーゼ)その度にまだ幼かった兄妹たちも「お母さん、安奈ちゃんが黒くなっているよ」と教えてくれたものでした。
 そんな安奈を主治医の先生は診察の都度、「まだまだ伸びますよ、成長が楽しみですね」とおっしゃいました。
 いつ息が止まるのかも分からない、食事もできないこの子のどの部分を診て、どこを診察してそうおっしゃるのか理解できませんでした。それ以上に安奈の将来を思うと空しくもありました。
 しかし、子供の力というものは想像を絶する不思議な力を潜めているものです。
 4人の子供の育児に追われながらの安奈の介護、毎日安奈と接していながら、いつ頃からこんなに元気になったのか憶えておりません。それだけ無我夢中だったのかもしれません。自分で呼吸ができるようになり、楽しい時は、満身の笑顔を振りまき、嫌なことには拒絶の表情を示すなど、とても信じられないくらい、表情豊かに成長しました。
 安奈が命を授かって13年。主治医の先生が「まだまだ伸びますよ、成長が楽しみですね」とおっしゃった言葉の深さをひしひしと感じ、この言葉が先の見えないトンネルを歩き続けてきた私達の心の支えとなっていたのです。安奈がここまで頑張ってこれたのは本人の努力もあったでしょうが、安奈に携わってくださった多くの方の「愛」と「力」だと心から感謝しております。
 健常者の何気ない動作、行動、意思表示が安奈にはなかなか思うようにできない。親として、不安であったり、悲しみでもありました。しかし、私はあなたと生きてきて、あなたに、また、安奈に携わってきてくださった多くの人たちによって自分自身が生かされていること、そしてまた、「命」の尊さを教えていただきました。
 安奈、ありがとう。
 これからもよろしくネ........

 


安奈ちゃん 1才


1997年10月18日


1997年12月20日

 

 

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