医療法人社団 慈恵会 新須磨病院

新須磨NEWS

2022年冬号

PDF ダウンロード

リウマチ・関節痛の治療特集

 リウマチ・関節痛の治療特集 1 

関節リウマチ治療とは?

医師や看護師、薬剤師が連携することで、患者さん一人ひとりにとって、
最も適切な治療が行えるように日々心がけています。

リウマチは患部を暖めると炎症がさらに悪化することも。
まずは病院での診察を心がけてください。

古林 関節リウマチを簡単に説明すると、関節の痛みや腫れが慢性的に続く病気です。これは免疫の異常から生じ、放置すると関節が破壊されて指が変形することもあります。中には間質性肺炎の合併や稀に毛細血管の血管炎により、指が壊死してしまう場合もあります。リウマチの治療は、早期発見・早期治療が広く浸透されており、最近は手がこわばるといった関節が腫れていない状態で来院される方も多く、最近の治療薬の改善もあり、変形まで進むことは少なくなっています。
馬原 リウマチの患者さんで最も多いのが、50歳前後の女性。男性よりも女性のほうが圧倒的に多いと思います。理由としては、閉経するぐらいの年齢が免疫の変化が起きやすい時期で、その影響だと考えられます。逆に、男性の場合は年齢に関係がないように思います。ただし、喫煙者や歯周病の方が発症リスクは高く、実際そのような傾向にあると思いますね。
古林 リウマチは、炎症が持続することで、痛みや腫れ、場合によっては変形を引き起してしまうことが特徴で、逆に軟骨のすり減りによる変形性関節症の痛みの原因は、炎症ではありません。つまり、炎症の有無によって、リウマチか変形性関節症かの分類がなされるのです。変形性関節症や安定した関節リウマチは、患部を温めると改善に向かうこともあります。 逆に、炎症がある場合に温めてしまうと炎症もさらに悪化させてしまう恐れも。リウマチに効くと謳っている温泉は時として逆効果になってしまうこともあります。炎症がある場合は、なるべく冷やすよう心がけてください。
稲生 温泉の効能効果欄に書かれているとついついどんな時でも効くと勘違いしてしまいがちですが、まずは病院で先生に相談して、自分の病気の状態を確認することが大切ですね。
古林 一般的な初期症状としては、起床時に手がこわばります。例えば、冬場に自転車をこいでいると、手が冷えて動かしづらかったり、痛みが走ったりしますよね? 5~10分程度手や指を動かしていると元に戻りますが、そういった症状が日常的に続きます。関節は腫れていないが、手がこわばるという状態の方は、血液検査で判断します。

リウマチの治療法は、患者さんとの相談から。
自己注射や内服薬など、治療法は多岐に渡ります。

古林 リウマチの症状は表れた時から完治するまではおよそ2年かかると言われます。しかし、その期間内で完治する人は全体の10〜15%。つまり、多くの人は完治よりも、治療によって病態が極めて安定する寛解を目標とします。基本的には異常な免疫を抑え込む免疫抑制剤を使用しますが、使い続けると効果が薄れてくることもあるため、その際は自己注射薬や点滴を利用して特殊なお薬を投与します。
馬原 当センターの取り組みとして、自己注射薬の開始時に医師、看護師、薬剤師で連携しサポートしています。具体的には、診察後、患者さんに見本の注射器を実際に触れて確認してもらい、自己注射の効能や使い方などが書かれたパンフレットをお渡しします。自宅で読んでもらい、次回の診察で、薬剤師の先生から注射薬の説明を受け、実際に自分で注射を打ちます。看護師はそのサポートだけでなく、注射の不安を少しでも軽減できるよう、会話を通してお手伝いをしています。
稲生 薬剤師は自己注射薬の手技だけでなく、薬の作用や副作用、シックデイについても説明しています。患者さんは事前にお薬のパンフレットで予習してこられるため、説明する立場としてもスムーズに指導することができます。他にも先生に聞き忘れたことや治療に対しての不安や疑問なども治療開始前に解決できるよう対応しています。

医師・薬剤師・看護師の連携を大切にしながら、
患者さん一人ひとりが望む治療を進めています。

古林 患者さんがどんな治療を望んでいるのか、ということが大事です。リウマチを治したいという想いは共通していますが、それを早く治したいのか、副作用なく治したいのかといったように、一人ひとり考えが異なります。副作用が心配な方は治療期間をじっくり長めに設定しますが、リウマチの活動性が高い方はより早く治療しなければならないケースもあり、その際は進行を止める治療を優先的に行います。
馬原 看護師も患者さんの痛みや辛さが軽減され、いち早く日常生活を取り戻せるよう最善を尽くしています。その中で、患者さんに診察で一番身近に接する立場として、問診をもとに会話を交わしながら体調の変化や痛みといったサインを拾い上げ、先生方にお伝えしています。また、点滴の場合は化学療法室を使用するため、化学療法室のスタッフの協力があってこそ。もちろん、私たちが患者さんに自己注射指導をする前に、薬剤師の方が事前に指導いただけるおかげで、患者さんの理解度があがり、スムーズにケア・指導ができています。このように、スタッフ間の連携をとても大切にしています。
稲生 現状、外来で行われるリウマチの治療において、薬剤師が患者さんに関われるのは自己注射薬を開始する時だけのごくごく一部で、医師や看護師のように一人の患者さんの経過をじっくり追うことはできません。だからこそ、薬剤師としての視点で関わりお薬に対する患者さんの不安を解決することを一番大切にしています。
馬原 お薬に関して、患者さんと看護師の橋渡しを担われていて、いつも助かっています。
稲生 ありがとうございます。あとは院内の薬剤師だけでなく、院外の薬局薬剤師さんとの連携も重要です。今は患者さんがスムーズにお薬を受け取れるよう在庫の調整などが中心ですが、今後は外来の医師や看護師と治療に関してももっと踏み込んだ連携をしていければと考えています。

▲関節リウマチ患者さんのレントゲン。赤丸は骨破壊が起こり、骨が欠けている部分。

喫煙や歯周病が原因で、リウマチを発症することも。
検査で早期発見・早期予防が有効だと思います。

古林 リウマチの予防法としては、禁煙や歯周病の治療はもちろんですが、リウマチ因子などを測定する検査機器で数値を測定してみることもおすすめします。免疫異常は発症する5年ほど前から血液内の数値で表れていると、献血からのデータで報告されています。検査をすることで、たとえ症状が見られなくても、自分が免疫異常をを持っていることが分かるかもしれません。それが分かるだけでも、早期段階で予防策がとれるので、有効的な手段だと思います。
馬原 あとは、ビタミンCや抗酸化作用のある食品をなるべく多く摂り、充分に睡眠を取り、適度な運動を心がける。これらはリウマチの予防だけではありませんが、これが健康を保つための一番の秘訣だと思います。健康を維持するために、規則正しい生活を送りましょう。

▲当院で使用しているリウマチ問診票。痛みや腫れだけでなく日常動作での支障などもチェックを行う。

 リウマチ・関節痛の治療特集 2 

関節痛 〜手指の痛み・しびれ・変形〜

手の症状で痛みがある場合はまず安静が第一

 冬になると関節が疼くような経験をお持ちの方も多いと思います。膝や腰の痛みと同じで、手指でも寒いと痛みがひどくなることがあります。その原因は、寒さにより血管が縮んで血行が悪くなることが主因と考えられています。また、動かす機会が減れば関節や筋肉がこわばりやすくなり、痛みが出やすくなります。そのため、痛みのある関節を冷やさないように気を付けることやストレッチが大切です。
 症状が痛みだけであれば、手指では変形性関節症やリウマチ、腱鞘炎などが考えられます。 変形性関節症は関節を動かすことで軟骨がすり減り、関節の隙間が狭くなることで関節が不安定になり、痛みを生じます。痛みには個人差があり、生活に支障がない場合は投薬などで経過観察しますが、ひどい場合は注射や手術を要する場合もあります。また、最近は女性ホルモンと関節炎の関係が指摘されるようになり、女性の方は女性ホルモンが不安定になりやすい出産後や更年期に関節の滑膜炎が起きやすくなるため、女性ホルモン類似物質のサプリメントが症状の改善に効果があることもあります。
 また、痛みにしびれを伴う場合は、手根管症候群や肘部管症候群などの神経が圧迫されて出る症状や、頸椎疾患の場合もあります。症状が軽い場合は痛みがなくしびれだけのこともありますが、その場合は、糖尿病や脳卒中などの可能性も考えなくてはなりません。
 特に手で起こる手指変形性関節症、 腱鞘炎、手根管症候群、肘部管症候群などは手指や腕をよく使う方に発症しやすく、治療の第一は安静になります。それでも改善しない場合や、痛みが強い場合に、投薬や注射、手術などの治療が必要となります。
 私自身、治療をするうえで最も大切にしていることは、患者さん一人ひとりの希望を最大限に尊重すること。治療をはじめる前には、その治療法のメリットとデメリットをしっかりと明示したうえで、どのような治療をしていくかを患者さんとともに考え、個人個人の最適解に導いていけるよう心がけています。

 骨粗鬆症は骨密度と骨質の低下により、骨の強度が低下して脆弱性骨折が起こっている、もしくは脆弱性骨折が起こりやすい状態になっていることを指しています。骨粗鬆症だと気づく方の多くは、検診で引っかかった方、早くに閉経を迎えた方で検査を勧めたら骨粗鬆症だった方、ただの骨折だと思って検査をしてみたら骨粗鬆症だったという3パターンが多数を占めます。特に女性、高齢、やせ型の方は注意が必要で、若い頃に過度なダイエットを行った方が、加齢とともに骨質が低下して骨粗鬆症になるという可能性が考えられます。また女性ホルモンのバランスなども関係していて、早くに閉経を迎えた方に検査をおすすめするのもそれが理由となっています。
 新須磨病院には骨密度測定装置(QDR)や3テスラMRI装置などがあり骨粗鬆症に対しても、非常に高いレベルで検査をすることが可能で、骨粗鬆症がどこの部位でおこっているかなど、細やかな診断ができます。骨粗鬆症はこの病気自体だけでなく、背骨が曲がってきた場合、それに伴う胃や肺の圧迫による心肺機能の悪化や逆流性食道炎、足の骨折によって寝たきりになるなど、生命予後が変わってしまうことが大きな問題となっています。
 治療としては一人ひとりに合った薬物治療を勧めることがほとんどです。個人に合わせた治療計画書を用意しているので、それにそった治療方法に取り組んでいただき、2〜3年ほどで通常の数値まで戻すことを目標にします。
 予防法としては、普段から歩行など適度な運動をして、青魚を食べるなど意識をすることが大切です。年を重ねても自分の力でトイレに行けるようにするなど、目標を持った生活を過ごすことで、骨粗鬆症にならないという意識が大切ですね。

 部署紹介 

検査室

正確かつ迅速に測定しその後の治療に繋げる部署

 臨床検査室では主に血液、尿、便といった生体の一部を測定する検体検査と、心電図やエコーといった患者さんに直接関わる生理検査などを臨床検査技師が行なっています。
 血液検査では病気の診断や症状を把握することができます。検査は医師の指示のもとに執り行い、外来患者の採血は臨床検査室に隣接している採血室で検査技師が行います。検体を素早く検査し、医師に伝えることができるのも新須磨病院が総合病院ならではの利点だと思います。
 またエコー検査では、腹部や胸部に溜まった水を針で抜く時に、安全な位置に穿刺ができるよう補助を行ったり、手術前に足の血管の位置や、乳腺の腫瘍部分に印をつけ手術の効率化や安全性を図っています。

TOPへ戻る

新スマサーチ