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飲み込みにくくなってきた…嚥下障害の症状と原因

耳鼻咽喉科

言語聴覚士 東浦

2024/05/08
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 病気などが原因の飲み込みにくさとは別に、飲み物でむせるようになったり、ご飯が飲み込みにくくなってきたという方がいらっしゃいます。これは加齢が大きく影響していることがあります。つばが出にくくなって口の中が乾燥する、飲み込みやすくなるまで食べ物をしっかり噛めなくなってきた、食事中むせる回数が増える、1度で飲み込めずのどに残ってしまう、痰がよく出るようになった…など、症状は様々です。

飲み込みに使うのどの筋力は、加齢と共に徐々に落ちていきます。のどの中の感覚もわかりにくくなってくるため、のどに何か残っている感覚がなかったり、まちがって気管の方に入ってしまっても自分では気付かないこともあります。 食べ物や水分が気管に入ると窒息や誤嚥性肺炎につながる危険があります。 誤嚥性肺炎になって、食事がとれない期間が長くなると、その間に筋力、体力が低下して思うように動けなくなり寝たきりの状態になってしまいます。そうするとさらに誤嚥性肺炎を繰り返すという悪循環に陥りやすくなってしまいます。

飲み込みにくいとき、食事の際の注意事項

食前、食後にうがい、歯磨きをする

 大切なのは、肺炎の原因になる細菌を口の中で増やさないことです。朝起きた時は特に口の中に雑菌が多いため、食事の前に歯磨きをすることが重要です。食事の後も、うがいや歯磨きをするとより予防効果が高くなります。歯が抜けてしまった方や、入れ歯を使用している方でも、口の中に細菌は繁殖します。歯磨きや舌磨きをすることで口の中に刺激が入り、唾液の分泌も促され、口の中をきれいに保つ効果があります。

姿勢を整えて、1口ずつ急がずによく噛んで食べる

 椅子に座って食べる場合、腰が背もたれにつくように深く腰掛け、背筋が伸びるようにまっすぐ座ります。足をしっかり床につけることで、座面からお尻がずれずに姿勢が安定しやすくなります。猫背のまま浅く座っていたり、上半身や頭が後ろ向きにそっていると、飲み込む力が弱まり、誤嚥リスクにつながります。例えば、ペットボトルから水を飲む様子を想像してみて下さい。口から気管までが直線的になり、口にふくんだ水分がのどに流れ込みやすくなるため、実は飲み込みに良い姿勢とは言えないことがわかります。
 食事のペースや一口に食べる量も大切です。口に運ぶスピードがはやすぎたり、一口が多すぎたりすると、年齢にかかわらず気管に入ってしまいます。本来なら反射的に咳き込むことで気管に入りかけたものを出すことができますが、加齢の影響でこの反射が起こりにくくなるため、自分自身や周囲も気づかずに、誤嚥してしまうことがあります。

口の中が乾燥してきて、唾が出にくい

 最近、口の中がよく乾いている、つばが出にくくなってきた…という症状も、加齢による影響が考えられます。飲んでいる薬の副作用や、病気が隠れている可能性もあるため、歯科口腔外科、内科、耳鼻咽喉科などの受診が必要です。
 別コラムで唾液腺マッサージの方法を紹介していますので、そちらも併せてご覧ください。

食べ物と水分を交互に摂取する

 例えば、食べたものがのどに引っかかったときに、水やお茶を飲むことがあると思います。それと同じで、ご飯やおかずを食べた後に水分を飲むことで、口の中やのどの中に残った食べかすを胃の方へ流すことができます。ご飯やおかずを食べる時には適度に水分摂取をはさむように意識することが大切です。食事の最後にも水分をとると、より口やのどに食べかすが残りにくくなります。

むせるときは、少しあごを引いて飲み込んでみる

 のどぼとけを指で軽く触れた状態で、つばを飲み込んでみて下さい。飲み込みの際には、のどぼとけがグッと上がります。通常のどぼとけは指の幅を超えて上がりますが、飲み込む筋力が弱くなっていると、人差し指の横幅分ものどが持ち上がらないことがあります。また、加齢によりのどの位置が下がってくると、下がった分だけのどを持ち上げるための筋力が必要になりますが、筋力も落ちてしまうためうまく持ち上げられず、水分や食事が気管に入りむせてしまいます。飲み込みの際に少し顎を引くことで、のどを持ち上げる範囲が狭くなり、むせにくくなります。あごを引くイメージとして、自分のにぎり拳をあごの下にはさむようなイメージをもって頂けると良いと思います。

頻繁にむせたり、飲み込みにくさが続く場合

 以上のような方法を試しても、頻繁にムセたり、飲み込みにくさが続くときは、耳鼻咽喉科を受診しましょう。内視鏡でのどの中を見ると、唾液がたまっていたり、痰がたまっていることがあるかもしれません。医師が診察し、水分や食事に工夫が必要と判断されれば、普段食べている食事からもっと食べやすい形に変えたり、とろみ剤を使って、食事や水分に「とろみ」をつける必要があります。とろみ剤を使用する際は、必ず専門家の指導のもと使用するようにしましょう。

最後に

 誤嚥してしまっても、必ず肺炎になるというわけではありません。食事の際に少し注意することで、飲み込みにくさが改善したり、誤嚥や誤嚥性肺炎の予防になります。

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