医療法人社団 慈恵会 新須磨病院

スマ★コラ

リハビリ

病気

耳鼻咽喉科

顔の片側の様子がおかしい ~顔面神経麻痺~

耳鼻咽喉科

李 佳奈、言語聴覚士 東浦

2024/04/18
X Facebook LINE Mail

ある日突然、顔の片側で、目が閉じられない、眉が動かない、口の端から水がこぼれる、顔がうまく動かせない…といった症状が起こったら、それは『顔面神経麻痺』かもしれません。

顔面神経麻痺とは

 顔面神経麻痺とは、顔の筋肉を動かすための神経(顔面神経)に麻痺が起こった状態のことで、一番の症状は「顔の半分が動かしにくい」というものです。他にも耳周囲の痛み、難聴、耳鳴、めまい、味が変に感じるといった症状が伴うこともあります。
 原因の多くは顔面神経のウイルス感染と考えられており、ウイルスが原因の顔面神経麻痺は『ベル麻痺』『ハント症候群』の2種類あります。ベル麻痺は単純ヘルペスウイルス、ハント症候群は水痘・帯状疱疹ウイルス(水ぼうそうのウイルスの再活性化)が原因とされています。疲労やストレスなどで免疫力が下がったタイミングで、発症しやすくなると言われています。
 その他の原因に脳卒中や腫瘍、外傷の影響などがあり、いずれにしても症状に気付いたら早急な受診が必要になります。耳鼻咽喉科では、主にウイルスが原因とされる顔面神経麻痺を診療しています。 顔面神経麻痺になると、目が閉じられず乾燥したり、食事がこぼれて食べにくいといった不便さだけでなく、左右で顔のバランスが変わって表情が作りにくくなったり、顔の印象にも影響を与えます。

治療について

顔面神経麻痺の60%以上をしめるのがヘルペスウイルスによるベル麻痺であり、抗ウイルス薬・ステロイド全身投与(点滴や内服加療)・ビタミン剤・循環改善薬などを投与します。帯状疱疹ウイルスが原因であるハント症候群では抗ウイルス薬の量を増やして治療します。いずれも早期に治療を開始することが重要です。
 また顔面神経麻痺になると顔の筋肉が動かなくなるので、筋肉が固まってしまいます。それを防ぐために手を使って表情筋をマッサージするなどのリハビリが必要となります。
 顔面神経は耳の下から頭蓋骨の外にでて、複数本に枝分かれして顔面の表情筋に結合して顔を動かします。顔面神経麻痺が起こると障害された場所から顔面神経が伸びてくるのですが、その際に元々支配していた筋と違う筋に迷入することがあります。これは病的共同運動といって高度の顔面神経麻痺で起こりやすく、口を動かしたときに目が閉じる、目を閉じると口がひきつるなどの不快な症状が起こりとても厄介です。病的共同運動の予防のためにも正しいリハビリが必要となります。

病的共同運動

リハビリについて

麻痺の影響で顔の筋肉をうまく動かせなくなるため、筋肉が痩せて固まってしまわないようにマッサージで筋肉を動かしてあげることが、顔面神経麻痺のリハビリテーションです。

注意事項

無理に目を開けたり閉じたり、口元を動かしてしまうと、目元と口元を動かす神経が入れ違い、目や口がひきつるなどの後遺症になることがあります。
必要以上に動かさず、手でマッサージを行う程度に留めてください。

リハビリ方法

①~⑦の場所に指をあて各1分、上下・左右・ぐるぐると円を描きます。
皮ふではなく、筋肉をほぐすようにゆっくり触れていきます。

※⑤はほうれい線の下を押さえ、ほほ全体を上に引き伸ばすように動かします。

①~⑦まで各1回ずつマッサージしたら、もう一度同じように繰り返します。

これを1セット(約5~10分)として、1日3回ほど行います。
※蒸しタオル等で血行をよくしてから行うと、より効果的です。

手術の場合 ~顔面神経減荷術~

 点滴・内服治療を行っても重度の顔面神経麻痺が改善せず、ENoGという筋電図の結果から90%以上の神経線維が障害されていれば「顔面神経麻痺減荷術」という手術の適応があります。顔面神経内のウイルスによって神経が腫れあがると、顔面神経管という耳の近くの骨の中の狭い空間で神経が圧迫されてしまいます。その骨の圧迫をとり、神経破壊の進行を止めるのが「顔面神経減荷術」です。なお、この手術は破壊された神経を修復するためではなく、神経の破壊を防ぐためのものなので、なるたけ早い段階、できれば麻痺が生じてから早期の手術が推奨されています。当院では耳の後ろを削って顔面神経の横側を広げる「経乳突法」を行っています。早期の顔面神経麻痺に手術を行った場合、薬による治療よりも高い回復率が見込めると考えています。

TOPへ戻る

新スマサーチ