医療法人社団 慈恵会 新須磨病院

新須磨NEWS

2023年春号

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女性疾患特集

 女性疾患特集1 

MEA(マイクロ波子宮内膜アブレーション)はお腹に
傷をつけることなく月経量を減らす侵襲の少ない治療法です

過多月経はさまざまな
原因で起こる病気です

 そもそも女性の子宮内腔は子宮内膜という組織で覆われています。女性ホルモンの働きで、この子宮内膜が剥がれ落ちて出血することを月経といいます。(月経による出血は、持続期間が3~7日、経血量は37~43mlが正常値とされます。経血量が80mlを超えると60%以上の女性は貧血を示すとされます)。月経時の出血が多過ぎて、貧血や動悸、息切れ等の症状が出現し、日常生活に支障をきたす状態を過多月経といいます。過多月経は日本では経血量140ml以上と定義されていますが、実際に経血量を計測して診断されることはほとんどなく、自覚症状と鉄欠乏性貧血の有無を確認して判断することが一般的です。
原因としては、
①子宮筋腫や子宮内膜ポリープなどの骨盤内病変
②骨髄疾患や重度肝機能障害といった血液凝固異常
③無排卵周期症や甲状腺機能異常などホルモン環境の 異常
などが考えられます。
 また、過多月経と気づかず我慢している女性も多いです。何回もトイレに行ってナプキンを変える必要があり仕事にならないと感じたり、検診で貧血の診断を受けた方は一度婦人科を受診してみてください。現在は良い薬もありますので、負担を軽減することができると思います。

過多月経に対する治療法として
MEAが登場しました

 過多月経に対する治療法としては、低用量ピルや子宮内黄体ホルモン放出システム、トラネキサム酸、NSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)といった『薬物療法』と子宮内膜掻把や子宮筋腫核手術、子宮動脈塞栓術、子宮全摘手術といった『手術療法』がありますが、比較的新しい治療法として『MEA(マイクロ波子宮内膜アブレーション)』があります。
 MEAは経腟的にサウンディングアプリケーターと呼ばれる直径4mmの金属管を子宮内腔に挿入し2.45GHzのマイクロ波(電子レンジで使われている電磁波)で子宮内膜を加熱、壊死させることにより出血量を減少させる治療法となります(出力設定70W、照射時間50秒で約20×16mmの領域が60℃に達し、たんぱく質を熱変性させるので、子宮内膜の基底層まで焼灼することが可能)。これによってお腹に傷をつけることなく月経量を減らすことが可能となりました。これは子宮全摘術に代わる低侵襲の外科的治療といえます。
 しかしこの治療法はどなたでもできるというわけではなく、子宮内膜悪性病変が除外できない方や、子宮筋層の厚さが1cm未満の方、子宮内腔の変形が強かったり子宮が大き過ぎる方などは治療の適応外となります。また妊娠希望の方も適応外となります。これはマイクロ波で子宮内膜を壊死させるため、着床に必要な内膜が増殖しなくなり、術後は妊娠が難しくなるからです。そのような適応外の方もおられますが、低侵襲性で社会復帰の早さを考えてもこれからより多くの方から必要とされる治療法でないかと考えています。またMEAは、過多月経に対する治療法として2012年に日本で保険収載されました。

合併症を起こさないために、
術前の評価をしっかり行います

 MEAを実施する前に術前の評価を大切にしています。まず大量の子宮出血が発生する原因が何かをしっかり調べる必要があります。特に大量の子宮出血が悪性疾患によるものではないことを十分に確認しなければなりません。子宮頚がん・子宮体がん・異型子宮内膜増殖症などの可能性を除外するために、細胞診・組織診・画像診断を適宜行っています。周辺臓器への熱損傷を防いだり、頚管粘膜の凝固を回避するために、MRIを撮影して凝固範囲を決定するなど、万全の状態で手術ができる体制を整えます。

過多月経に対する治療法

術中も超音波を併用するなど、
細心の注意を払って手術を行います

 実際に手術を行う際には、膀胱や消化管などの子宮以外の臓器に合併症が起こらないように、注意深く確認しながら進める必要があります。子宮筋層が 1cm 以上あれば、子宮以外の臓器がマイクロ波による熱で影響が出る可能性は低いと考えられています。そこでMRIや超音波を使い、子宮の形状と子宮筋層の厚さの検討を行った上で MEA が可能かどうかの決定を行います。
 手術は経腹超音波下に行います。まず経腹超音波下に子宮鏡を挿入し、子宮内に腫瘍性病変がないこと、大きな変形がないこと、両側卵管口を確認します。腫瘍性病変がある場合や月経周期により子宮内膜が少し厚くなっている場合は焼灼に先立って子宮内膜全面掻把を行うこともあります。次に超音波下にサウンディングアプリケーターを挿入し、先端の位置や、照射部位での子宮筋層の厚さを確認してマイクロ波を照射します。通常6~8回程度の照射で完了します。
 焼灼後に再度子宮鏡で確認を行い、子宮頚管の熱変性がないことや、子宮体部のほぼ全域が白色の無血管領域になっていれば十分であると評価します。子宮内を掻把して壊死物質をできるだけ排出させた後は、生理食塩水を還流して洗浄代わりにしています。

入院期間は最大2泊3日、
術後約1週間で日常生活が送れます

 当院で治療する場合は、基本的に入院は1泊2日(コロナ禍の状況下ではコロナの検査を含めた2泊3日 ※2023年3月31日現在)で行います。痛みはありますが、鎮痛剤で対応可能な程度です。その後、日常生活に支障がないレベルまで回復するのは、患者さんにもよりますが1週間程度とお伝えしています。手術は基本的に腰椎麻酔で行っております。術後早期に動き過ぎると頭痛を起こす患者さんがいますので、合併症を考慮して1週間とお伝えしています。

 女性疾患特集2 

vNOTES-腹部に傷が残らない手術-とは

腹部に傷が1つも残らない
新しい腹腔鏡手術です

 従来の開腹手術に比べて腹部の傷を小さくし、低侵襲で手術を行う目的として、腹腔鏡手術が導入されました。腹腔鏡手術は腹部に3〜4か所、5〜10mm程度の切開を入れ、そこからカメラや鉗子を挿入して手術を行う術式になります。ただし、腹部に穴を開けて手術を行うため、開腹手術よりは傷が小さいですが、3か所以上の傷が残ってしまいます。そこで、さらに低侵襲の術式として『vNOTES』が登場しました。
 「NOTES」とは人体に元から開いている口や鼻、肛門、膣などに手術器具を挿入して行う手術であり、傷あとが残らない術式として注目されていました。vNOTESも腹部に傷あとが残らない術式で、「子宮筋腫」や「子宮腺筋症」、「過多月経」など、婦人科疾患を対象にしています。
 vNOTESが適応される例として子宮全摘手術がありますが、腹部に傷が残らない以外にも、膣式単純子宮全摘手術ではできなかった卵管や卵巣などを子宮と同時に摘出することができます。他に手術時間の短縮も図ることができ、また身体への負担が大幅に減少するため、術後の痛みが軽くなり、早期社会復帰が可能になることもメリットと言えます。入院期間は7日間で、個人差はありますが術後約2~3週間ほどで社会復帰可能です。
 メリットの多いvNOTESですが、全ての患者さんに適応するわけではなく、
1:直腸の手術を受けたことがある方
2:ダグラス窩周囲に子宮内膜症のある方
3:悪性疾患の疑いがある方
4:骨盤に放射線治療を受けたことがある方
5:骨盤内感染のある方
6:子宮全摘後の方
7:妊婦
上記に当てはまる方にはvNOTESでの手術ができません。他にも腹腔内に癒着がある場合などはvNOTES手術が難しい場合があります。

可能性が広がるvNOTESで
婦人科疾患の悩みを軽減できるように

 今まで開腹手術や腹腔鏡手術でしかできなかった子宮筋腫や卵巣のう腫の手術が、vNOTESで行えるようになりました。また、1996年4月より腹腔鏡下膣式単純子宮全摘手術が保険適応となり、腹腔鏡手術の件数は飛躍的に増えています。vNOTESも保険適応の治療ですので、これから手術数も増え、さらに術式が改良されてくると思われます。当院は2022年2月に神戸市内でもいち早くvNOTESを導入し、実績を積み上げています。婦人科疾患でもしお困りの方がおられましたら、まず一度ご相談ください。

 女性疾患特集3 

子宮頚がんとHPVワクチンについて

子宮頚がんのリスクは「定期検診」と
「HPVワクチン接種」で下げることができます

 子宮頚がんは子宮の頚部と子宮の入り口にできるがんで、性的接触により子宮頚部の上皮細胞に発がん性ヒトパピローマウイルスが感染し、その感染が数年~数十年にかけて持続すると、子宮頚部異形成と呼ばれる子宮頚がんの前段階(前がん病変)の状態となります。子宮頚部異形成はその病変の程度によって、軽度異形成(CIN1)、中等度異形成(CIN2)、高度異形成・上皮内がん(CIN3)の3種類があり、進行していくと子宮頚がんが発生します。前がん病変の場合は、病気の部分だけを切除する「円錐切除術」等で治療できますが、進行すると「広汎性子宮全摘術」をする必要があったり、抗がん剤や放射線治療を行う必要があります。日本では毎年、約1.1万人の女性がかかる病気で、毎年約2,800人の女性が亡くなっています。患者さんは20代から増え始め、30代までにがんの治療で子宮を失ってしまい妊娠できなくなる方も、毎年約1,200人います。
 このような子宮頚がんを防ぐために推奨しているのが「定期的な子宮頚がん検診」と「HPVワクチン接種」です。子宮がん検診は当院を含め指定医療機関で検診ができますし、助成対象や無料対象の方もおられるので、一度ご確認いただければと思います。また「HPVワクチン接種」に関しては、子宮頚がんのハイリスクといわれる種類のHPV感染を予防するワクチンを接種するため、前がん病変の発生率が減少することが知られています。
 定期接種の対象である小学校6年生~高校1年生の女子、接種機会を逃した平成9年度~平成17年度生まれの女性はキャッチアップ接種の対象となり、無料で受けることができます(他のワクチン同様、人によっては一時的な立ちくらみなどが生じることもありますので、接種後に体調の変化が現れたら、まずは接種を行った医療機関などの医師にご相談ください)。子宮頚がん検診に関しては、神戸市の場合は20歳の時と40歳の時は無料のクーポン券がもらえたり、当年度に20歳以上の偶数歳の誕生日を迎える女性はその年度の4月1日~翌年3月31日の間に1度受診することができます。
 子宮頚がんはとても身近な病気です。しかし日本では子宮頚がんの受診率やHPVワクチンの接種率がとても低い状況です。早期発見で助かる病気ですので、ぜひ「定期的な子宮頚がん検診」と「HPVワクチン接種」を行ってほしいと思います。

 部署紹介 

施設管理室

快適な病院を護り続ける
縁の下の力持ち

 施設管理室は、病院の構造物や電気設備、給排水衛生設備、空調設備、消防設備など医療に関わる機器を除いた設備を日々点検し、故障などの早期発見に努め迅速に対応する業務を行っています。 私たちは現在2名で新須磨病院と新須磨透析クリニック、慈恵会本部の巡回点検を担当しており、毎日午前と午後に異常がないか点検しています。 日々巡回しているとわずかな機械音の違いであったり少しの違和感でも気付くようになってきます。他にも看護師やスタッフからの電話も大切です。より多くの目が協力してくれることで、見逃しが最大限少なくなっていると思います。その中で異常や異音などを発見した場合は、施設管理室で修理可能なものはその場で補修します。部品などの交換や更新が必要な場合は、速やかに業者やメーカーサービスに手配をします。私たちも技術者ですので、業者やメーカーサービスへの手配に関しても、「このような異常があるので恐らく〇〇の部品が必要だと思う」など、事前に話を進めることで復旧の時間短縮に努めています。
 私たちの仕事は医療現場が昨日と同じ環境で、スムーズに医療を行ってもらう状態を持続させることです。縁の下の力持ちとして新須磨病院と職員、患者さんの快適な環境を支えていけるように日々努めます。

KASUGA HIROKAZU 春日 弘和 施設管理室 係長
FUJITA KAZUYA 藤田 和也 施設管理室

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