医療法人社団 慈恵会 新須磨病院

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鼻、ノド、耳の困った症状特集

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 鼻、ノド、耳の困った症状特集1 

鼻づまりの原因はウイルス?細菌?アレルギー?副鼻腔炎とは

副鼻腔とは?

 副鼻腔は鼻の周りにある顔面骨の空洞で、粘膜で覆われている部分のことを言います。副鼻腔と鼻腔は細い通り道でつながっており、副鼻腔の粘膜から出る粘液や膿汁などはこの道を通って副鼻腔外からのどに流れていきます。液体の量が多くなると鼻の前から流れでて、鼻水となります。

 慢性副鼻腔炎をほうっておくと副鼻腔の粘膜がはれあがり、鼻の中に鼻茸と呼ばれるもの(ポリープ)が飛び出してきます。

風邪やウイルス、アレルギーなど鼻腔炎にはさまざまな要因があります

 副鼻腔炎は別名「蓄膿(ちくのう)症」とも呼ばれ、風邪のウイルスや細菌、アレルギーなどによって、副鼻腔(顔面骨にある空洞)の粘膜および周囲の骨壁に炎症が起こることで発症する病気のことを言います。発症から4週間以内の場合は「急性副鼻腔炎」、症状が3ヵ月以上続く場合は「慢性副鼻腔炎」と診断されます。
 通常は副鼻腔と鼻腔には小さな換気路があるのですが、アレルギー性鼻炎や風邪などをきっかけに鼻の粘膜が腫れたりすると、換気が効果的にできず、副鼻腔内に粘液が溜まります。そうすると副鼻腔の粘膜が腫れて、感染性の粘液が溜まり、膿汁が鼻の中や喉に流れ出る状態になります。これは細菌感染などの急性炎症の反復、アレルギー性鼻炎や喘息などの個体の反応様式、鼻中隔湾曲症※1・鼻甲介※2の形態などの解剖学的条件が複雑に絡み合って起こるといわれています。症状は鼻水、鼻づまり、後鼻漏が典型的ですが、副鼻腔の近くにある歯・目・頭の痛みが出ることがあります。
 基本的な治療方法は、原因となっている細菌に対して抗菌薬※3を使用し、副鼻腔に溜まった膿の排泄を助ける去痰薬※4などを併用しながら治療を行います。鼻洗浄で膿を洗い出すことも有効です。通常、治療には3〜6ヶ月かかることがあります。また、症状が改善されない場合は内視鏡を使ってポリープを切除したり、副鼻腔の骨を切除して溜まった膿を取り除き、副鼻腔の換気を改善させる内視鏡手術を行う場合もあります。当院ではより安全な手術を行うためにナビゲーションシステムも導入しています。

単なる鼻づまりだと思わず、投薬で改善しない場合はぜひ受診を

 「急性副鼻腔炎」や「慢性副鼻腔炎」以外にも難病に指定されている「好酸球性副鼻腔炎」という病気があります。一般的な慢性副鼻腔炎は抗生剤内服と内視鏡手術でかなり治りますが、この副鼻腔炎は手術をしても再発しやすく、ステロイド※5で軽快するという特徴があります。しかしステロイド内服を中止したり感冒などを起こすと鼻茸が増大して副鼻腔炎が悪化し、悪い状態に戻ってしまいます。この鼻茸は水膨れのような形態をしており、顕微鏡で調べると好酸球という免疫細胞が多数存在しています。はっきりとした原因はわかっていませんが、気管支喘息やアスピリンなどの解熱剤で喘息やショックを起こすアスピリン不耐症の人に多く起こります。当院での治療は抗生剤やステロイドの内服加療や内視鏡手術で、一旦鼻茸や副鼻腔の粘膜の腫れをきれいに取りきります。術後は鼻の洗浄とステロイド内服を併用しながら、再発を繰り返す人には抗IL-4/13受容体抗体を2週間に1度投与します。そうすると約60%~70%の人に効果がみられます。
 他にも副鼻腔にカビがたまることで鼻水、鼻づまり、後鼻漏などの副鼻腔炎の症状を引き起こす「副鼻腔真菌症」というものもあります。この病気はCTで副鼻腔内に石灰化や壁の骨が厚くなるなど特徴的な所見がみられることがあります。副鼻腔真菌症は内服治療で完治することはなく、免疫低下の際に周囲の骨を破壊し、失明や脳炎を引き起こす非常に予後不良な浸潤型真菌症となる場合があるので、病状によっては手術が必要となります。
 また、むし歯やインプラントなどの異物が原因で副鼻腔に炎症が起こる「歯性副鼻腔炎」では根管治療※6・抜歯・異物除去などを必要とする場合があります。当院では鼻内内視鏡手術※7とともに歯科口腔外科の先生方に、歯科的処置をお願いすることがあります。鼻づまり・鼻水・後鼻漏※8などで投薬を受けても改善しない場合など、当科にご相談ください。

※1:鼻中膈湾曲症…鼻の穴を左右に分けている鼻中隔が強く湾曲しているせいで、鼻づまりや口呼吸、いびき、頭痛、嗅覚障害、鼻出血といった症状が慢性的に現れる病気のこと
※2:鼻甲介…鼻腔の左右の側壁にあるヒダ状の隆起した突起物で、息の流れや量を調整する働きがある
※3:抗菌薬…細菌を壊したり、増殖を抑えたりする薬(抗生物質)のこと
※4:去痰薬…痰(たん)を吐き出しやすくする薬のこと
※5:ステロイド…両方の腎臓の上側にある副腎から作られる副腎皮質ホルモンの1つであるステロイドを、薬として使用すること
※6:根管治療…歯の根管内の死んだ神経や汚染された象牙質を取り除き、歯の根を徹底的に洗浄・消毒し、最後に薬剤を詰める治療のこと
※7:鼻内内視鏡手術…小型の内視鏡を鼻の穴から挿入し、医師がその映像をモニターで見ながら行う手術
※8:後鼻漏…鼻水が喉に落ちる、流れる、鼻水が喉につまるような症状のこと

 鼻、ノド、耳の困った症状特集2 

 咽頭痛とは、のどの咽頭部が炎症を起こし痛みを感じる症状のことを言います。軽度であれば、嚥下時や発声時に痛む程度ですが、重度になると持続的に痛みを感じるようになり、時には飲食困難になってしまう場合もあります。
 咽頭痛の原因で一番多いのは「感冒(かんぼう)」です。いわゆる風邪のこと。また風邪症状に続発する「急性扁桃炎」もよくある原因のひとつです。扁桃炎はウイルスや細菌の感染が原因で咽頭を取り囲むように存在する扁桃組織が炎症を起こすことで咽頭痛を引き起こします。他にも咽頭に水疱※1やアフタ※2ができて痛みを感じる「咽頭帯状疱疹」も咽頭痛を引き起こします。小さい頃に水疱瘡にかかっている方は、大人になってもそのウイルスが神経節というところに潜んでいます。普段は自分の免疫で抑えているため症状が出ることはありませんが、疲れが溜まったり免疫が落ちてくると、神経を伝って広がることがあります。実際に見えるところに水疱ができる場合もありますし、受診してカメラで咽頭を見てみたらアフタが多発していることもあります。咽頭帯状疱疹はどちらか左右片方だけにできるため、その特徴で判断しています。他にも悪性腫瘍である「咽頭がん」や「熱傷」が原因で咽頭痛になる事もあります。
 また今の時期は、花粉症で悩まれている方もたくさんおられると思いますが、花粉症で鼻が詰まり口呼吸になると、咽喉頭粘膜※3が乾燥してしまい、喉に痛みを感じることがあります。また咽頭アレルギーを合併してしまうと、咽頭粘膜にアレルギー性の炎症を起こしてしまい、咽頭痛を引き起こしてしまいます。

 喉の痛みを訴えて当院の耳鼻咽喉科を受診された場合、まずは視診で口から扁桃が充血して赤くなっているかどうか、腫れやアフタの有無を確認します。次に気道狭窄や異物の有無を調べるため、喉頭ファイバースコープを鼻から挿入し咽喉頭を観察し、痛みの原因を探っていきます。他にも感染症が疑わしい場合は血液検査や頸胸部CT※4を追加し精査します。ウイルス感染であれば解熱鎮痛剤や抗ウイルス薬、細菌感染であれば抗菌薬、異物であれば摘出術、アレルギーであれば抗アレルギー薬、他科疾患の場合は専門科へ紹介しています。
 咽頭痛を防ぐには、喉を乾燥させないことが大切です。外出する際にマスクを付けていただくのはもちろん、寝ている時にマスクを付けるのも効果的です。今は加湿効果のある市販のマスクもあるので、乾燥が気になる方にはおすすめしています。寝ている間のマスクが難しいという方には、加湿器を使って、部屋の湿度を40~60%に保っていただければと思います。咽頭痛は重症化すれば、1~2週間の入院や気管切開などが必要になるときもあります。喉に痛みを感じる場合は、早めに受診していただければと思います。
※1:水疱…水膨れのこと
※2:アフタ…口内炎のこと
※3:咽喉頭粘膜…鼻の通り道の突きあたりから食道の入り口までの粘膜のこと
※4:頸胸部CT…X線を使って首から胸部の断層写真を撮影する検査のこと

 鼻、ノド、耳の困った症状特集3 

 最近、「めまい」や「耳鳴り」「フラツキ」が多いなという方はおられませんか?一般的にそういった症状の場合、「突発性難聴※1」や「メニエール病※2」が疑われることが多いのですが、それ以外にもあまり知られていない病気があります。それが「外リンパ瘻」です。耳の奥には硬い骨に囲まれた内耳と呼ばれる部分があります。この部分はバランス感覚や聴覚のセンサー的な役割を担っています。そんな内耳には外側に外リンパ、内側に内リンパと呼ばれる液体があるのですが、脳脊髄液※3と繋がっている外リンパが内耳の窓から漏れ出て、センサーに異常をきたすことを「外リンパ瘻」と言います。外リンパが漏れ出ても無症状の方がいる一方、強いめまいやフラツキ、難聴などの症状が出る方もおられます。
 ではどんな時に外リンパ瘻が起きるかというと、たとえば、鼻かみやくしゃみ、咳など、体内の圧力が急上昇した時や、重い物を持ち上げようと踏ん張った時、また飛行機や新幹線、ダイビングなどで耳に圧力がかかった時や、交通事故で頭部を強く打ち付けた場合にも脳脊髄液の圧力が高まるため、外リンパ瘻が起こりやすいと言えます。他に環境要因として挙げられるのが、低気圧と大潮。低気圧は天気予報を見てなんとなく自覚しやすいですが、満月と新月など月の引力に影響を受ける大潮も症状が出やすくなります。診察時にいつ頃症状が出ているか尋ねると、大潮の時期と重なっている方も多く見受けられます。

 当院で外リンパ瘻の診察をする際には、まず頭や首の動きでめまいが出るか問診や眼振検査※4を行い、次に耳に圧変化をかけてめまいの有無を確認します。その後に聴力検査も行うのですが、通常座って行う検査に加えて、漏れ出てくる液体量が増えやすい状況で測定するために、横になった状態でも行い比較します。最後は耳のCTや内耳3DMRI※5を撮り、外リンパ瘻かどうか判断します。この内耳3DMRIを行っている病院は当院を含めてもまだまだ少ないです。
 もし外リンパ瘻と診断された場合、まずは保存的対処法で治療していきます。できるだけうつむかない、息を止めない、気張らないなど気を付けながら日常生活を送っていただきます。ただし、症状が悪化したり、日常生活に支障をきたしてしまうときは、内耳窓閉鎖手術※6を行います。当院に来られる方は、ずっと原因がわからないフラツキやめまいに悩まされていることが多いので、手術は約5人に1人と割合的には多い印象です。
 外リンパ瘻の予防策としては、先ほどの保存的対処法でもお伝えしましたが、日常生活の中でうつむいたり、息をとめるような圧がかかる動作はなるべく避けることです。トイレでうつむきながら気張ってしまう、前かがみになって咳込んでしまうなどは、より圧がかかりやすい姿勢ですので、注意してください。低気圧や大潮の時期を把握しておくことも大切です。また、横になると圧が高くなって、目がまわりやすくなるという知識を持っておくといいかもしれません。
※1:突発性難聴…突然耳が聞こえなくなったり、耳鳴りやめまいなどを伴う原因不明の疾患のこと
※2:メニエール病…突然激しいめまいが起こり、難聴や耳鳴り、吐き気などを伴う病気のこと
※3:脳脊髄液…脳と脊髄、そしてこれらを包んでいる膜(硬膜)の間に存在する無色透明な液体のこと
※4:眼振検査…めまいの際に見られる、自分の意思とは関係ない異常な眼球運動(=眼振)の有無を   調べる検査のこと
※5:複雑な仕組みになっている内耳の全体像を立体的に観察できる検査のこと
※6:内耳窓閉鎖手術…中耳内の卵円窓と正円窓を観察し、その際外リンパ液が流出していれば閉鎖す    る外リンパ瘻閉鎖術のこと

 プロフェッショナル紹介 

 私が持つ認定看護師という資格は、認知症患者さんの支援はもちろん、その認知症患者さんを看護する職員に対して、より具体的な相談や指導ができる資格です。認知症の方というと、“何も分からなくなってしまった人”というふうに思われがちですが、実はそんなことはありません。時々正常な自分に戻り、「今の自分はおかしい」「みんなに迷惑をかけている」と認識し、そういった自分と葛藤しながら生活を送っている方が多くいます。もしそんな時に「年を重ねるとそんなものだよ」と言ってくれる人がいれば、とても安心して生活ができると思うんです。認知症の方の症状は、接し方によって良くも悪くもなります。例えば、しっかりと話しを聞いてあげることで症状が落ち着くこともありますし、言い方次第では暴力的になることもあります。そうなってしまう前に、「こういう時はこうしよう」と看護する側に助言をしていくのが、認知症の認定看護師の仕事です。しかし、助言をしたからと言ってできるようになるかは別問題です。助言がなくてもしっかりと対応できる人もいます。今や認知症は、高齢者の方で5人に1人と言われている時代です。認知症の方への理解を深めていくために、言うならば認知症患者さんを守っていくために、今後期待されている資格の一つです。

 私がこの資格を取得しようと思ったきっかけは、5~6年前に新須磨病院が島根県松江市に看護キャリアセンターを設立した時、「行ってみないか?」と先輩からお声掛けいただいたことです。迷いもありましたが、約半年間そこで認知症について学んだことで、「自分の知らないことがまだこんなにもたくさんあるんだ!」と知れた貴重な経験になりました。認定看護師の資格を目指す前から、高齢者の方にはしっかり声を掛けるように努めていたので、資格取得後に認知症患者さんへの接し方で大きく変わったことはありませんが、知識が増えたことで対応の幅は広がったと感じています。今一番強く思っているのは、認知症の方への接し方についてもっと世の中に広めていかなければいけないということです。私が住む地域は高齢者の方が多く住んでいて、認知症の方もいます。実は認知症を患っている方の中には、認知症であることを隠して生活されている方もいるんです。社会全体で認知症をもっとオープンに受け入れ、認知症の方が暮らしやすい世の中にしたいなと思っています。
 現在、私は地域包括ケア病棟の師長として働いているため、なかなか認定看護師としての大きな活動ができていませんが、今後は同じ考え方を持って行動できる職員を一人でも増やしていきたいと思っています。 

 部署紹介 

医療情報室

臨機応変に動ける院内窓口として
できるだけノーとは言わないように

 医療情報室には現在、診療情報管理士2名、医師事務作業補助員2名の計4名が所属しています。主な業務は電子カルテの整理やDPC関連業務(コーディング、厚生労働省DPCデータ調査に関連するデータの作成)、医師や看護師がデータを2次利用できるようにデータの収集、加工などを行っています。他にも新須磨病院の医療情報室の特徴として、持ち込まれたデータのウイルスチェックや院内のセキュリティ対策における事務局的役割も担っているところです。また、医師が診療記録を吹き込んだICレコーダーの文字起こしや、当院で初診患者としてガン診断された方のデータを集め、厚生労働省に報告する事務作業も行います。時にはコロナ渦でオンライン診療や面会時の患者さんやご家族とのやりとりも医療情報室が行うなど、仕事領域は多岐にわたります。
 医療情報室で扱う個人情報は、要配慮情報です。取り扱いには細心の注意を払い、少しでも不明なことがあれば必ず関係部署に確認を取るよう心がけています。
 これからも臨機応変に対応できる部署として、医師や看護師、さらには院内全体のサポートに取り組んでいけたらと思います。

WAKI SANAE
脇 早苗 医療情報室 係長

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